皮脂は美肌に大敵

酸化した皮脂はニオイの元になるだけではなく、肌をきたなくします。酸化した皮脂とは、いいかえれば、腐った脂のことです。です。腐った脂は皮膚を刺激して炎症を起こさせ、このことが何度もくりかえされるうちに、皮膚や毛根に慢性的なダメージを与えてしまいます。日本でも、女性は舞踏会などで背中が大きく開いたイブニングドレスを着ますが、貴婦人の背中ほどすべすべで、なめらかで、とても美しいと聞いたことがあります。高貴な女性たちは、せっけんをぬりつけたタオルを斜めにたすき状にして、背中をゴシゴシ洗うようなマネはするものではないと教育されているのだそうです。そのため、背中は、さっとお湯を流して終わりにしていますので、肌が乾燥することも、過剰な皮脂で肌に炎症が起きることもなく、とても美しい肌を保つことができるというわけです。は手術のまえにブラシを使って、手をすみずみまで徹底的に洗ったものです。消毒薬の入ったせっけんと消毒されたブラシを使って3分間洗ってから、別のブラシを使って2~3分間再度洗い、それからさっとすすぐ、と教わっていました。さらに、消毒せっけんを手にぬりつけて終わるという医者もいました。ところが、合計5~6分間かけてきれいに洗っても、毛穴や汗の穴には、かならずバイ菌がひそんでいます。洗っても洗っても、バイ菌をゼロにすることはできません。しかも、このように毎回、徹底的に洗っていると、じきに手がボロボロになります。実際、よく手を洗う医者ほど、決まって手は荒れて皮がむけ、炎症をおこしていました。とくに外科医の手は乾燥して、湿疹ができて、無数の傷ができていました。じつは、外科医にとっては、この傷こそが問題だったのです。傷ができると、そこにバイ菌がいっせいに増殖して、数時間後には傷口をびっしりとバイ菌がおおってしまいます。こうなると、もういくらよく手を洗っても、皮膚の表面ばかりでなく、傷表面には大量の菌が棲みついているので、もはや菌をすべて洗い流すことはできなくなってしまいます。そして、その傷がたとえ目に見えないような小さなものであっても、とくにその傷が指先などにある場合は、ゴム手袋にはいつ穴があくかわからないため、傷が治るまでしばらく手術を休まざるをえなくなってしまいます。
手を清潔にしたい一心で懸命に洗っても、バイ菌をゼロにはできないばかりか、そのせいで、さらに多くの傷ができて、かえってバイ菌が増えてしまい、手術のできない手になってしまうというわけです。つまり、清潔にしようとすればするほど、手はより不潔になっていきます。現在は、長々と、硬いブラシで洗い続けることは、無意味で有害という研究結果をもとに、手に細かい傷をつけてしまうブラシを使う手洗い法はしなくなりました。ふつうにせっけんでさっと洗い、皮膚表面を消毒するだけです。外科医の手洗いの歴史は、完璧な清潔さを求めると、かえって不潔になることを教えてくれています。髪の毛にも、そしてからだにもそれは当てはまります。